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「幸福の黄色いアウェーゴール」(『フットボールとラブソング』#15)掲載

2020.03.13

 

サッカー小説連載『フットボールとラブソング』(https://football-novels.com/)に「#15 幸福の黄色いアウェーゴール」掲載。今回は08-09シーズン、欧州CLのチェルシー対バルセロナ、あのイニエスタの劇的アウェーゴール。

Comment:

録画放送ではなく生中継を観る醍醐味、みたいなのは、こういう試合のことをいうのだろうと思います。チェルシーサイドからしたら、当時最も輝いていたペップのバルセロナを、戦術的に完全にはめこんで倒す、その快感に到達するまさに寸前で、一方のバルセロナサイドからしたら、これだけ攻撃しているのに枠内シュートゼロという、まったくうまくいかない有様。じりじりとした焦燥感と恥辱の前に膝を折る寸前でした。普段は温厚で物静かなイニエスタが鬼の形相でシャツを脱ぎ、振り回し、興奮する姿からも、その「抑圧と解放」の度合いがわかるというものです。もしもVARがあの時代に導入されていたら、おそらくあのイニエスタのアウェーゴールの興奮は生まれなかったでしょう。主審をつとめたエブレベに詰め寄るバラックやドログバは、本当に勝利を盗まれたようなやりきれない気分だったはずです。だってピケのあれは明かにハンドだもの(そのあとも、もうひとつ微妙なノーホイッスル判定があった)。それでも、これがサッカー。VARそのものを否定する気はまったくありませんが、今は、「それでも、これがサッカー」と言える肝要な時代ではなくなってしまった。そのことが少し寂しいです。「正確なこと」と「楽しいこと」がお互いに共存できるように、VARとそれをめぐるサッカーのシステムに改善が重ねられることを願います。