NIKKI

スパーズと盗撮。

2020.10.15

 

気づくと日本のAmazonプライムにも「ALL OR NOTHING」のトッテナム・ホットスパーのドキュメントがラインナップされていて、先週は毎晩、少しずつ寝る前に見ていました。

翻訳がまだなのか、リリースされたといっても日本語字幕のない英語版なので、正直、何を喋っているかは全然わからないのだけれど、サッカーで起こることはだいたい、もう決まっているので、見ているうちにだんだん何を言っているかわかったような気になって、それなりに楽しめるものです(それにモウリーニョの英語はけっこう聞き取りやすい)。

正直なところ、昨シーズンのスパーズには、とりたててポジティブな出来事はなかった。シーズン序盤の低迷からの監督交代にはじまって、エリクセンは出て行っちゃうし、ケインとソンのふたりの得点源は揃って後半、怪我で戦列を離れちゃうし、なんとか滑り込みでの(リーグ6位による)ヨーロッパリーグ出場権の確保がやっと。

でもそういうシーズンだからこそ、演出で盛り上げきれない「素のシーズン」みたいなものが見れて、全8エピソードを見終わったときには、いつのまにかスパーズを応援したい気持ちになっていました。

以前のマンチェスター・シティの回もそうだったけれど、このシリーズはストーリーを描くことよりも、群像ものとして人の表情を丁寧に追って、演出的な加工を施さずにありのままを切り取って見せてくれるから、ドキュメンタリーとしてとても好感を持てます。

コロナ禍に直面したとき、選手たちがどんな表情だったのか、ソンとロリスがピッチ上で口論になったとき、実際どんな感じだったのか、レヴィ会長とモウリーニョがどんなふうにコミュニケーションをとっているのか、そしてハーフタイムにモウリーニョが選手にどんな言葉をかけているのか、実際に映像で見ることができるなんて、なんて贅沢。そして画面に登場するチームのウェアとかグッズとかがシンプルでいちいちカッコいい。

でもこんだけ追いかけ回されたら、撮られる側はいやだろうなあ。つい、自分で自分を演出しちゃうだろうなあ。年中カメラがそばにあったら、素の自分=カメラを意識している自分、になっちゃうだろうなあ。

そう考えると、ドキュメンタリーの本質は実は「盗撮」にあって、「隠しカメラ」の劇的な性能向上こそが重要なんじゃないか、と思えたりします(別に悪いことを考えているわけじゃないです)。

スパーズの話に戻すと、ガレス・ベイルの復帰した今シーズンの方が、攻撃陣に競争が生まれて、見応えがありそうなのが惜しいところ。