2020.09.11
ようやく気温が少し下がって、蒸しタオルみたいな不快な空気が肌にまとわりつかない朝。
事務所に出勤するとき、駐車場から歩いて公園を横切るのですが、今朝は公園の木や植物の管理をしてくれている近所のおじいさんと久しぶりに顔を合わせました。いつも通り、「おはようございます」と、ひと声。
その人とは、もう何年も、すれ違ったり目が合う度に「こんにちは」「おはようございます」と言葉を交わしているのだけれど、それ以上の話題がなく、本当にすれ違うだけ。会釈だけ、ひとことだけ。ときどき、何かもっと気の利いた言葉をかけたい、植物の世話の話とかちょっと聞いてみたい、と思いつつ、でももうずっと「ひとことオンリー」の関係なので、今さら何かを話しかけるのもなあ…という感じで、(たぶん)お互い、微妙な距離感で接し合ってきました。こちらはもともと世間話とか下手くそな人間なので、もうここまで「二言目はしゃべらない」関係ができてしまうと、怖くて何も言えないのです。だいたい、何を言えばいいかわからない。
で、今朝。「おはようございます」「おはようございます」の後、なんとなく、あ、今日は二言目を発してみよう、という気分が訪れました。ちょうどいい感じの間、というか、タイミングっぽいものがふわっと浮き上がってきたのです。目の前に。
そこでおずおず、「やっと涼しくなりましたね。」と言ってみました。
そしたら、その人はパッと笑顔になって、「そうなんさ。あっちぇくてねー。」
「暑かったですよねー。」
わずか五秒。それだけで、十年近い「微妙な距離感」がちょっと変わって、ほんの少し仲良くなれたような気がして、弾むような気持ちで事務所のドアを開けました。秋の訪れ。
今度、大寒波が来たら、「寒いっすねー」と言ってみよう。
© 2019. 藤田雅史 – MASASHI FUJITA All Rights Reserved.