NIKKI

訳がわからなくなる。

2019.06.22

 

普段、郵便受けに投げ込まれるDMやチラシ、折り込み広告などを手に取ってじっくり眺めることはまずないのだけれど、最近、気になってしょうがないチラシがあります。「通販生活のメディカル枕」。

もともと、これだ!という愛用枕に出会えずにいる枕難民。羽根枕、低反発枕、そば殻枕、よくわからない素材の枕、ただバスタオルを重ねただけの枕、いろいろ試したり組み合わせたりしたものの、まだ運命の枕に出会えていません。どの枕も、高さや硬さがしっくりこない。完璧な結婚相手、というものが存在しないように、完璧な枕というのもきっとこの世には存在しないのだろう。完璧な枕なんてきっとロマンチックな妄想だ。そう思っていました。

で、この「通販生活のメディカル枕」。実に気になるのです。何が気になるかって、この手の広告には「もう手放せません!」みたいな絶賛コメントとともに商品の愛用者がよく載っていて、このチラシの紙面にもコメントつきでデカデカと9名、掲載されているのだけれど、なんと、その全員が有名作家さんなのです。

海堂尊、絲山秋子、三浦しをん、藤田宜永、佐藤愛子、なかにし礼、角田光代、有栖川有栖、高見澤たか子。そうそうたる顔ぶれ。しかもそれぞれが、いかにこの枕が素晴らしいか語っていて、愛用歴は短くても半年、長い人だと27年。作家というのは自分の言葉に責任を持つもの。その意識はとても高いもの。そんな一流の作家が9人がかりで激賞しているのだから、まだ本を一冊出したばかりとはいえ、物書きのはしくれとして、これはこれは気になって仕方がない。だって角田光代が10年愛用している枕だよ。三浦しをんが11年愛用している枕だよ。この枕、一刻も早く買ったほうがいいんじゃないのか。

「通販生活のメディカル枕」は、もとはイタリアの枕専門メーカーが病院用に開発したもので、整形外科の権威による設計。だからメディカル枕。チラシの表面には、「ねぜ、眠りの質にうるさい作家さんたちは『通販生活のメディカル枕』を手放せないのか。」というコピー。チラシの裏ではなぜこの枕が優れているか丁寧に説明されているのだけれど、残念ながら満面の笑みで枕を抱いて写真に写る作家たちにしか目がいきません。特に目をひいたのは、愛用歴22年、藤田宜永のコメント。

「この枕に頭をのせると、3分で訳がわからなくなる。」

まじか。体験してみたい。安眠とか快眠じゃない。訳がわからなくなる。そんな枕が存在するのか。

というわけで今、悩んでいます。買うべきか買わざるべきか。『通販生活のメディカル枕』税込み10,584円。