2019.11.05
あっさりとしたラーメンが食べたくなって行きつけのラーメン屋に行ったのは、ランチタイムの終わりかけの13時半過ぎだった。
その店でいつも頼んでいる「あっさり」のラーメンを注文したところ、「スープがもう終わっちゃって、あっさりはダメなんですよぉ」と憐れまれる感じで店員さんに言われたので、残念だなあと思いながら笑顔をつくって「こってり」を注文した。
スマホを見ながら待つこと数分。カウンターの隣の席に男の人が座った。雑誌を広げながら、彼は店員さんに「あっさり」を注文した。ああ可哀想に、君もか。と内心で同情していたところ、店員、「はい、あっさりですねぇー。(厨房に向かって)あっさりー!」。えっ!? 一瞬、スマホを操作する指が止まった。目が丸くなった。これは、いかなるまがごとか。
まず思った。聞き間違いかもしれない。「あっさり」とは少し違う、例えば「まっさり」みたいな珍種のラーメンが新登場して、それを頼んだのかもしれない。うん、きっとそう、聞き間違いだろう。そう思っていると、自分の目の前に「こってり」が運ばれてきた。食べる。こってりしている。あっさりを求めて店に入った身体に、こってりは思った以上に重たい。脂で口の中がぎとぎとする。
数分後、「はい、おまちー」と隣の席にも注文の品が届いた。僕はけして隣を見るまい見るまいと自分に言い聞かせ、一心不乱に「こってり」をすすり続けた。見るまい見るまい。それがいちばんよいのだと。真実を見なければ誰も傷つかない。見るまい見るまい。でも、ちら見。
隣は「あっさり」だった。すごくむかついた。そんな、今日の昼過ぎの出来事。実話です。いろいろ世の中にうんざり。
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