短篇小説 - 2018
INTRODUCTION
東京・大阪・新潟の4人のトップヘアスタイリストによるヘアショー「オトキルマチ」のために書き下ろしたウェブ短篇。それぞれの街で暮らす四人の女の子たち。故郷の町を離れる高校生、はじめて本気の恋をする大学生、未来のない恋に惑う派遣社員、愛する人を失った会社員。いつも微妙な恋をして、いつも個人的な悩みを抱えている彼女たち。ゆるやかに有機的に、つながりつつ遠く離れた、4人のショートストーリー。イベントに登場するモデルの女の子を主人公にしたオリジナルの短篇小説。
作品
Second Good -bye
Dead End
Lies and Raindrops
Eternity
フォトグラファーのタクマくんから「こんな話があるんですけど、どうですか」みたいに誘ってもらって、ヘアショーのために物語を作る、というたいへん珍しいことに挑戦した作品です。何のためのストーリーなのか、というそもそもの部分を共有することからはじまって、結果的に「東京・大阪・新潟の三都市で暮らす四人の女の子のそれぞれのストーリー」として成立しました。難しさも大いにあったけれど、普段の仕事ではまず会うことのない人と出会うことができたのは嬉しかったし、いろいろ刺激的でした。ヘアショーの当日、カルチャーはカルチャーでもファッション方面のベクトルが強い観客は小説なんてきっと読まないだろう、「はぁ?」って感じじゃないか…という先入観があったので、会場に行くのが怖かったというか、場違い感にビクビクしていましたが、案外、お客さんや関係者の方々、読んでくれたみたいでよかった。物語の基本のひとつは人の「心の変化」だし、美容の目的もまた(外見の変化を通しての)人の「気持ちの変化」。そう思えば、学ぶべき、というか盗み出せるポイントはたくさんありそうです。あと、ステージを実際に見て、技術そのものの美しさにハッとさせられました。シャキ、とハサミを一回入れるだけで、空気が一変する。あの感じは独特です。切った髪はもう戻らないわけだから。その一回性、不可逆性みたいなものに、なんというか、潔い凜とした快感。(2019.7.18)
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