NIKKI

本のルックス。

2019.06.26

 

デザインをはじめとした、いわゆる「クリエイティブ系」といわれる仕事に、十数年たずさわってきました。書くためには生きなくてはいけなくて、生きるためには働かなければならなかったから。なんとかこれまで食いつないでこられたのは、デザインの仕事が収入源としてきちんと機能していたからです。

自分が本を出すとき、その本は、だから内容だけでなく、ひとつの物体として、それなりに気に入る本にしたいとずっと思っていました。見た目、手触り、読みやすさ、もっといえば、捨てにくさ。笑。(でも予算には限りがあるので、その範囲でいかによいものにできるか。)

今回の『ラストメッセージ』は四六判サイズ、234ページ並製本の、ごく普通の本です。とはいえ、僕にとっては世の中にきちんと流通する最初の本。はじまりの本だからこそ、清潔で誠実な、たたずまいのよい本にしたかった(もし万が一、これが最初で最後の本になったとしても後悔のないように、余計に、清潔で誠実な、たたずまいのよい本にしたかった)。息子のランドセルはちゃんとしたものを選んでやりたい、みたいな気持ち。

・例えば、表紙カバーと帯の紙。指に触れたときのソフトなザラ感を大切に、少し野暮ったいくらいの厚手のものを選択。すっと指が馴染むように、それが読者の「受け入れる」態勢へとつながるように。

・例えば、装画。最も親しいデザイナーでありイラストレーターでもある山下洋平さんに、こういうのが欲しいんです、とお願いして描いてもらいました。山下さん、表紙の女の子のスタンスミスのカラーとか、リュックの肩の下がり方とか、傘の斜め具合とか、細かいところまで気をつかって描いてくれて、感謝。裏表紙のキャミソールの女の子は、本当は本番テイクのものが別にあったのだけれど、その前のテイクの女の子の肌と肩甲骨の感じの方が好きで、本番テイクじゃないのを使わせてもらいました。

・例えば、カバーを外したときの本体の表紙まわり。僕はいつも本を読むときカバーを外すして読むのだけれど、人目につくところで読むとき、「あいつ○○読んでる」「へー、あの人○○とか読むんだー」と思われるのがすごく嫌なので、今回の本はカバーを外すと、一見、何を読んでいるのかわからない、というものにしてみました。シンプルな真っ白のところに英字だけがちょこちょこっと入っていて、小説か専門書か、国内の本か海外の本かもぱっと見、わからないように。

・例えば、作品ごとの扉ページ。色をつけてみました。それぞれの色は、作品の雰囲気にあわせて選びました。こうすると、読んでいる途中、今自分はこの作品のどのあたりを読んでいるのか、あとどのくらいで一本読み終わるのかが、一目瞭然になるという利点。本当は本文用紙とは違う色紙を差し挟みたかったのだけれど、予算の関係でそれは断念。

・例えば、作品が終わってページをめくったときに出てくる、小さな挿絵。これも、山下さんにお願いして描いてもらいました。脇にちょこちょこ書かれている汚い字は僕のです。よくマンガにあるこういうオマケ的な表現、やってみたかった。本筋とは離れたところで、遊んでみたかった。山下さんに絵を描いてもらってから、台詞を考えました。こういうのは得意なのです。

今回の本、ルックス面でのお話でした。「へえ、作者がそんなにこだわってたんだ、じゃあどんなもんか買ってやろう」と、うっかりAmazonでポチッとしてくれる人がいることを祈って。さて、今日はこれから飲み会。