NIKKI

パンと米、分断の秋。

2020.11.06

 

金曜日。

原稿の締切が重なっていたので、よし、しっかり寝て明日に備えよう、と布団にもぐって電気を消したのが昨夜9時半。

ぐわんぐわん、ぐわんぐわん。

奴隷が船底でオールを漕いでいるような、魔女が人間をどろどろに煮込んだ悪魔のスープを攪拌しているような、そんな音で目が覚めたのが午前2時半。

ぐわんぐわん、ぐわんぐわん。

ああ、またあれか、と腹を立てながら階段を下りて台所の電気をつけると、案の定、丸みを帯びた四角い胴体を揺らしながら唸り続けている、パン焼き器。

ぐわんぐわん、ぐわんぐわん。

階段のすぐ横が台所で、階段のすぐそばにパン焼き器があるものだから、その音が階段を上がってすぐの枕元にこの音がダイレクトに響いてしかたない。うるさい。

ぐわんぐわん、ぐわんぐわん。

玄関から玄関マットを引きずってきてパン焼き器の下に敷いてみたけれどちっとも防音効果はなく、座面が柔らかい布地のスツールを持ってきてパン焼き器をその上にのせてみるも、やはりまだうるさい。洗面所からバスマットを2枚引っ張り出してきてパン焼き器の上にかぶせる。たいした効果なし。そうこうしているうちに2階で寝ていた息子も「うるさいなあ」と起きてきて、「うるさいよね」「うるさいね」と途方にくれて繰り返すばかり。

ぐわんぐわん、ぐわんぐわん。

こうなったらコンセントから電源コードを引き抜いてやろうかと思うものの、でもそんなことをしたら、どんな険悪な雰囲気で朝がはじまるかは火を見るより明らかなので、「まあ、そのうち終わるよ。耐えよう」「うん」とふたりで二階に上がる。

ぐわんぐわん、ぐわんぐわん。

ぴた。

布団を被り直した途端に、攪拌が終了したらしく、音がやんで、ああよかった、これで眠れる。そう思ったものの、一度目が醒めてしまったら、今度はなかなか寝つけない。

そして寝坊。憎たらしいふわふわの焼きたてパンにブルーベリージャムを塗りたくり、出勤。眠い。

それにしてもあれだけうるさい攪拌音の中で、起きてきたのは男ふたり。ぐっすり寝ている我が家の女ふたり、妻と娘はすごい。男と女はやっぱり構造が違う。

一昨日、寝る前は赤だったウィスコンシンとミシガンが、翌朝いっぺんに青に変わっていてびっくり。

アメリカも我が家も、分断の秋。