NIKKI

どうか、いい本になりますように。

2021.06.23

 

来月発売の本の原稿が、ついにこの手を離れて、肩の荷が下りた水曜の午後。

いや、肩の荷が下りたというよりも、走りをやめて膝に両手をついたような状態。もっと走らなきゃ、もっと走れるはずなのに、という。でも、ここが今の自分の体力の限界。ものづくりとはそういうもの。息をきらせて、膝をふるわせて、ごくりと唾を飲みこんで顔を上げれば、自分に足りないものがはっきりとわかる。ゴールに近づけば近づくほど、そのゴールは遠く離れていくのです。まだまだ、まだまだ、力が足りない。ああ、もっと走れるはずなのに。40歳、ここから。道はずっと先へと続いています。

とはいえ、立ち止まった今のこの場所から見える景色は、けしてつまらない景色なんかではありません。「アルビ」というオレンジ色のモチーフを通して、書きたいこと、書けること、16の人生に、物語に、ぎゅぎゅっと詰め込みました。どれも短い話ですが、この16本の小説の中に、音楽CDでいうところの「アルバムの捨て曲」みたいなものはひとつもない。隅から隅まで、しっかり血が通っています。人間の体温を感じられる、熱い本になると思います。少なくとも、書いた本人がそう思っています。

珍しく、夕飯を作りながらお酒を飲んで、お風呂でEUROのハイライトを見て、どうかいい本になりますように、と祈る夜。

どうか、いい本になりますように。