NIKKI

代車との別れはさびしい。

2019.09.20

 

今週、車検だった。2002年製造のトヨタのセダンに15年近く乗っている。走行距離は約15万km。バンパーの左右にはずりずりと擦った傷がついているし、ドアも若干凹んでいる。オーディオは今では珍しいカセットテープ/CDだ。そろそろ買い替えを勧められそうなものなのに、毎回、何の営業もしないトヨタの人はえらいと思う(こいつには車を買うお金なんてないな、と思われているだけかもしれないけれど)。

車検といえば、いつも楽しみにしていることがある。代車。もう十数年前の話だけれど、用意された代車が「ハイエース」だったことがあった。「ハイエースしか空いてないのですがよろしいですか?」と訊かれて、車に興味がないため当時ハイエースというのがなんなのか知らずに「あーはい、全然大丈夫です」と気軽に答えたら、「こちらです」と案内された先にハイエースがあった。その車体のでかさに、うっ、となった。当時はまだようやくペーパードライバーを卒業…くらいの運転歴だったので、内心は完全に怖じ気づいていた。でもそれ以上に見栄っ張りなので、颯爽と運転席に飛び上がった。恐る恐るアクセルを踏んで車道を走ってみると、でもハイエースは思いの外運転しやすく(車高が高くて見晴らしがよく、しかも両サイドのミラーが大きいので見やすい)、走っていて気分がよかった。翌日、ハイエースを返却するとき、別れがひどくさびしかった。

そう、代車との別れはさびしい。ほんの一日二日とはいえ、自分の足となり、自分の安全を守り、自分の気分に寄り添ってくれる車。今回は「シエンタ」だった。最初はやはり慣れないのでブレーキを踏むのも恐る恐るなのだけれど、すぐに慣れて、運転は快適だった。軽快なウィンカー音が気に入った。一緒にスタバに行った。タリーズにも行った。バイパスも走った。ブルートゥースでiPhoneと同期もした。我が家の駐車場にも招いた。そうやって、夏の終わりをともに過ごした。しかし一度出会ったら、いつかは離れるのが宿命だ。代車との別れはさびしい。ああ、シエンタ、元気かな…。車検には、小さな恋が潜んでいる。